《MUMEI》
淡ク
「私は誰かを待っていました。
本を読んで、私は此処に居ると主張し続けていました。頁を破いて飛行機を風に乗せて……」

彼女は夢心地な笑顔を向けながら窓の外を見渡す。

「俺もきっと貴方を待っていました。」

林太郎は不気味だった白い紙飛行機が愛おしくなっていた。

「……夕日が沈んでしまう。」

丸い橙色の夕日にゆったり窓に手を伸ばす。それが帰る合図である。

「また明日、夕日が沈む前に必ず来ます。」

林太郎へ向かって彼女の娜かな指が揺れる。
袂を押さえ、優美に微笑む姿に魅了されていた。

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