《MUMEI》

場違いなほど明るく響くメロディーが、個室の外から聞こえる。
アイツだ、直感的にそう思った。

音に驚いた男が力を緩めた、瞬時に吸い込む酸素。久しぶりの呼吸で撓んでいた肺が軋む。

電子音は15回分のコールのあと、途切れた。

「・・・・うるさいね。でも大丈夫、すぐわからなくなるから」

気取った台詞に吐き気を催す、お前絶対童貞だろ

男は俺の首から手を放したが、あらためて脚を抱えなおした。ダメだ、やっぱり犯られる
電話、電話がもう一回鳴ってくれれば。誰かそれに気づいてくれるかもしれない、こんなトイレの前で携帯が鳴ってるなんておかしいんだから。鳴ってよ、鳴らして

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