《MUMEI》

どん、と扉に何かが外からぶつかるような音がした。続いて何かが引っかかる音、がっ、がきっ、木製の扉を外から誰かがこじ開けようとしている。錆びた蝶番が軋む、腐りかけの木が崩れる、扉が、
扉が、開く。

「何してんの?」

落ちてくる低めの声。
俺と男は目を見開いたまま硬直していた。

「何してんのって聞いてんだよ!」

どっと空気が揺れた。目の前にいた男が、こじ開けた扉から個室に入ってきた男によってなぎ払われる。狭い個室のタイルに、転がる。男に抱えられていた足が付け根から持っていかれて嫌な音を立てる、すぐに身体が支えられて、映る、慣れ親しんだ友達の顔。

「大丈夫か、銀二」

あぁ、やっぱりだ。

手錠を取り払われ、それから俺の口をふさぐタオルも解いた。絡みつく繊維にえづく、ぼろぼろと涙が零れる。痛い。体中が寒くて痛い。

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