《MUMEI》

床に転がった男がうめき声を上げていた。それに即座に反応する黒い目、俺の身体を便座にもたれさせるように座らせると、立ち上がる。

「なぁオマエ何してくれてんの?」

足を振り上げる、振り下ろす。くぐもった男の悲鳴。また振り上げる。身を捩っても逃げられない。蹴りつけられる顔、肩、胸、腹、ぱきり、軽い音、あ、あれは折れた。
俺は便座に座ったまま、男が蹴られる様子を呆然と眺めていた。

「なぁ何してくれてんの?俺の大事なヤツに」

髪を掴んで顔をひっぱりあげられた男は短い悲鳴を上げた。その目は虚ろで、何も見ていない。

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