《MUMEI》

「立てるか?」
「へい、き」

伸ばされた手を掴んで足に力をこめる、あ、俺裸足だ。ふらつく身体を抱きとめるように支えられて立ち上がる。温かい。


英田、だ。英田直弘、だ。



地面に転がった男はまだ何かをぶつぶつと呟いていた。ひうひうと呼吸音が漏れている。

「銀二、お前先出てろ」

優しい口調で促されるが、俺は直弘の服の裾を放さなかった。

「や、だ、こわ、怖い」

引きつる喉で答えると、しょうがねぇな、と直弘は俺の手を握った。そのまま、スニーカー履きの足先で男のジーンズのポケットをまさぐる。

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