《MUMEI》 「何、してんの」 「財布さがしてんだよ」 「お、お金なん、て、いいじゃ、ん」 「アホか、免許書とか探してんの」 男が身体を捩ると、直弘は苛々と男の尻を蹴り上げた。 「わか、わかってるから、いいよ」 「わかってるって何が」 「そい、つ、前の痴漢、だ」 俺の言葉に、直弘は目を丸くした。その真っ黒の目がすぐに細められる。そして男の横にしゃがみこむ。 前へ |次へ |
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