《MUMEI》

「そうなんだ?」

男は何も言わない。

「俺の大事なコイツに、2度も手ェ出したんだ?」

低くすごむような声。

「コイツは俺のなんだよ、アンタが手ェだしていいもんじゃないんだよ。俺以外は誰も」

そのまま硬いタイルに男の頭を振り落とす。ぐぅ、と小さく男が鳴いた。

「2度と顔見せんな、次来たら殺してやる」

直弘は吐き捨てて立ち上がり、俺の肩を抱いた。ぶつけた肩は触られると激痛をもたらしたけど、触れる手のひらの体温が、物理的にも精神的にも凍えきった身体には心地よかった。

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