《MUMEI》 *放浪*決断がつかないまま数日が経った。 瑠果は編み上げたマフラーを手に冬夜の部屋へと向かう。 「いるか?」 問い掛けると、返事が聞こえた。 「これを渡そうと思ってな」 瑠果はマフラーを冬夜の首にかけてやる。 「あったかいか?」 「はい、ありがとうございます」 冬夜は微笑んだ。 すると、 「冬夜」 瑠果はためらいがちに切り出した。 「旅行の事だが──」 「はい」 「気ままな旅なら出たいと思う」 「といいますと──」 「行くあては無いが‥どこか遠くへ行ってみたい」 「では行きましょうか」 「今からか?」 「はい」 冬夜の言葉に瑠果は一瞬唖然としたが、頷いた。 「よし、出発だ」 前へ |次へ |
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