《MUMEI》 もう一度抱きしめる。けらけらと笑いながら、銀二も抱きしめ返してきた。 「もーだからなんで直弘がそんな心配するのかな」 「・・・・大事だからに決まってるだろ」 「・・・・・・・・・・・・えーと、」 「・・・・素で照れんな」 大事なんだ。 失いたくない。 放したくない。 誰にも触らせたくない。 あぁ、やっぱ俺 こいつが好きだ すとん、と頭に答えが落ちてきた。何の抵抗もない。そっか、好きだ。好きなんだ。どす黒い感情と混ざって、溢れる。 湯気が立ちこめている、湯船にずいぶん湯が溜まってきた。 「風呂入っていい?」 宥めるような声で言われて、俺は身体を離す。 「ゆっくり入ってろ」 「うん」 ぱたん、と閉じられた浴室の扉を俺は少しだけ見つめた。 ざぁざぁとシャワーの音が聞こえる。 好きだ、あいつが。近藤銀二が好きだ。 やっと納得できた回答を、転がすように、俺は何度も頭の中で繰り返した。 前へ |次へ |
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