《MUMEI》

壁際でこちらに身体を向け小さくなって寝息を立てる友人、俺はもう半分のスペースで仰向けに寝転がる。
ぐっと下がった晩秋の気温に毛布をかぶると、疲れ果てた様子の銀二はベッドに入るなりすぐに眠りに落ちた。少しだけ触れる裸の足が冷たい。
俺は何となく目がさえてしまって眠れずに、天井にわかだまる暗闇を見つめながらとりとめのない思考を巡らせていた。

とにかく、だ、

自分の気持ちに素直になろう、と俺は考える。
薄暗い個室のあの光景、恐怖に怯えた目、震えるやせぎすの身体、柔らかい笑顔、全てが脳裏に焼き付い離れない。
大切で、守りたくて、愛しい。
陳腐な言葉しか浮かばない自分に苛立つが、どれも全部本心だ。

銀二が好きだ

覚えたての言葉を繰り返す子供のように、俺は何度もその言葉を頭の中で反芻する。

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