《MUMEI》

私の中身は、黒いこしあんだった。


「あ〜、外れた!」


「残念!」


店内からは悲鳴ばかりが聞こえた。


瞳さんは一人一人の確認に行っていた。


「あの、これって、普通ですよね?」


「ん?」


春樹さんは、私の黒いこしあんを見て、固まった。


「瞳!瞳!ちょっと来てくれ!」


春樹さんが慌てて瞳さんを呼んだ。


「何よ」


「これ、蝶子ちゃんの中身」


春樹さんが私の手元を指差した。


私の手の中には、半分に割った七夕饅頭があった。


「黒い、こしあん」


瞳さんが呟いたので、私は頷いた。


「という事は…」


瞳さんが大声で皆に告げた。


「今年の織姫は蝶子よ!」

ーと。


皆から、歓声が上がった。

「キタキター! さすが俺の蝶子ちゃん!」


「だれがお前のだ!」


俊彦が周囲からツッコミを入れられていた。


「あの、織姫ってなんですか?」


私は、七夕饅頭を配り終えた薫子さんに質問してみた。


「聞いてないの?」


私が頷くと、薫子さんは説明を始めた。


『花月堂』の七夕饅頭の饅頭は普通は中身は白餡で


イベントでは、こしあんが織姫で

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