《MUMEI》

昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。



「…もう戻んねーとな」


「うん、」



食ったもんの片付けをすると、
俺たちは立ち上がった。



「じゃぁ、椎名くん先に帰ってて」


「…え?なん―…」



で?、という1文字と疑問符を飲み込む。



―…何でって、そりゃ
蓬田が、おれと何かあるって
誤解されたくねーからに決まってんじゃねえか。


…おれバカじゃん。



ふ、と笑いが零れた。



「…椎名くん…??」



蓬田が心配そうに
おれの顔を覗き込む。



「…ん、なんでもね」



そう答えて、蓬田(正解にはおれ)の頭を軽く小突くと



「じゃーなー」



ヒラヒラと手を振って
階段を駆け降りた。




―…なんか、モヤモヤしたもんが下っ腹の辺りから浮き上がってきて、


それを誤魔化すように、小さく息を吐いた。

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