《MUMEI》
そして現在
「なんとなく伝わったか?……取り敢えずもう行くわ。コレ置いてくから。」

幹祐に話していたら時間が無くなった。

「わかった。コレ、待ってる。」

光はコレ扱いされるのに抵抗無いようだ。
俺の頬に背伸びして頬を触れさせた。

「……迷惑かけんなよ。」

俺が言えた立場じゃないけど。

「待ってるよ。」

光の笑い顔は俺の中でほんのり色付いて温める。

「おぅ。」

俺の過去も鬱々とした精神も受け入れてくれる。
……光は最高だ。

俺だけじゃ此処には来れなかった。
静かな夜明けだ。

家は比較的長い廊下で昔滑りながら遊んだっけ。



「もう行くのかい?」

柔らかい声だ。

「バァさん……また戻るから。
ごめんな……ジィさんボケたの俺のせいかも。」

俺があのとき殴ったから……

「何を言い出すと思ったら……老いたら忘れてくのは当たり前のこと、国雄が気付かなかっただけで高校生の頃から始まってたんだから。ほら、早く行きなさい遅刻するよ!」

背中を押された。
バァさんは変わらず俺を国雄と呼び続けている。

以前より腰が曲がったし、足元も弱々しいけど、背中を押す腕は力強い。

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