《MUMEI》

「まさか…」


薫子さんは、頷いた。


「織姫が祐介で、彦星が勇になっちゃってね。

男二人で花火を見たの」


浴衣の男が二人仲良く花火大会…


半ばヤケになった二人は、ふざけてカップル繋ぎをしたり、寄り添って花火を見たらしく


その後二人にはホモ疑惑が浮上したらしい。


「だから、今年は皆燃えてるの。

初めて織姫が『フリーの女の子』だから」


「燃えすぎません?」


店内は騒然としていた。


「蝶子だからじゃない?」

「そんな…」


『事無いです』と言おうとした時。


「俊彦、早くしろ!」


七夕饅頭を乗せたお盆を持った春樹さんの怒鳴り声が響いた。


「待って! 俺の人生かかってるから!」


(は? 人生?)


俊彦の言葉に私は呆れた。

大体、俊彦は足の見えない浴衣が嫌いなはずだ。


「早くしろ!」


春樹さんがまた怒鳴った。

俊彦は、拝みながら、ようやく七夕饅頭を選んだ。


「言っておくが。白餡だからって全部食べて証拠隠滅するなよ」


「や、やだな〜! そんな事」


考えていたのは、周囲にバレバレだった。


その後。


全員が七夕饅頭を選び終えた。

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