《MUMEI》
呼び捨て
「こんなにご馳走してもらう程の事してないのに、なんだか申し訳ないわ…」


目の前に運ばれた食事を食べながら心が痛んだ。


私、真剣に部屋探しを手伝ってないのに…


しかし佐久間はニコニコしながら言う。


「お礼って言うのは口実。単純に愛加を連れてきたかったんだ」





あれ?


「今…私のこと愛加って呼び捨てにした?」


「うん、したよ」


佐久間は嬉しそうに料理を口に頬張る。


「なんで急に呼び捨てなのよ!?」


「だって太一さんも呼び捨てにしてたし…」


太一の真似?


「関係ないじゃないっ!」


「関係ないよ。とにかく俺は今日から愛加って呼ぶことにしたの!愛加も俺のこと謙二って呼んで!」


佐久間が珍しくムキになって言う。


「呼び捨ては良いけど、謙二とは呼ばないからね!」

「えぇぇぇーっ、そんな」


佐久間はガッカリした顔になる。


「ワガママ言わないで!」


そんなやり取りをしていると、別のテーブルに大西課長を発見した。


「大西課長………?」

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