《MUMEI》

「あぁ、ショータ。おはよう」
「おぉ、キー坊」
倉庫の扉を開けたのは萩生喜維だった。短く切った黒髪。大きな瞳。健康的に焼けた腕で大きなダンボール箱を抱えている彼女にショータは手を伸ばす。
「俺が運ぶよ」
「いや、大丈夫。なんならまだあるし」
そう言い、キイは後ろを振り返る。
「アンプとスピーカーがまだ。あと着ぐるみとかあっから」
「あーそうだった。今日着るのか」
げんなりしているショータの横を通り過ぎながら、キイはヨロシク頼むよ、と言葉をかける。
そのこともなげに荷物を運ぶ後ろ姿を見送りながら、体格ががっしりしているとはいえ、それでも女性らしい肢体のどこに自分と変わらないだけの力が出せるのかと同じ仕事仲間ながらショータは常々不思議に思っていたが、ここで考えあぐねていてもどうしようもない。気合いを小さく入れ直すと倉庫の中へ入った。

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