《MUMEI》

「…みつるは今日も空手か〜??」


私を見上げながら、瀬田くんが訊ねる。


電車のボックス席。
私達は、向かい合って座っていた。



「え!?…あー…え…と…」



―そっか、椎名くん、空手してるんだった…


私が返事に困っていると、



「あれ??みつる変なのー。
いつもなら『とーぜん!!』とかって
偉そーにするクセにー」



そ、そうなの…??

…でも、私空手なんかできないし、一応ケガしてるし…



「ケ、ケガしてるから…」



私が言い訳すると、



「…へ!?…―お前、中学のとき試合でケガして、
それでも病院行かないって言い張って、試合続けて―
結局、アバラ折れてたことあったじゃん」


「…―!!!?」


…そ、そんなハードな…!!!



「そんでさ、そんまま優勝だし。…それから入院しないっつって、練習行って、何回も連れ戻されて…
オレ的に、あれは爆笑もんだった!!」


ば、爆笑…??



「そんなに空手好きかよー、ってさ。
…まあ、ちょっと羨ましかったりもしたけど!!」




瀬田くんは、ちょっとね、と笑った。


椎名くんが病院嫌いな理由を知った私は、



左腕の包帯を、じっと見つめた。

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