《MUMEI》

僕は重い足取りで、店の奥に歩いてゆく――…。


中島は僕に背を向けたまま、乱雑なショットで的玉を蹴散らしていた。


彼の心は荒れているのだろうか…


こんな時、どんな風に声をかけるべきか……僕は悩んだ。



「中島…。久しぶりだな…。」


とりあえず――…ありきたりな挨拶で声をかける――…。


中島はプレーを中断して、こっちを振り向いた。


「やあ、磯野……突然呼び出してすまないなぁ…(笑)」



思いがけず穏やかな口調が、僕の心配を払拭した――…。

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