《MUMEI》

そんな事を思っていると、冬夜は無邪気に笑い出した‥。

訳が分からん。

「な‥何がおかしいッ」

「冗談ですよ。からかってみただけですから」

「い‥いきなり驚かすなッ」

「でも」

冬夜は私の手の甲に口づけした。

「お嬢様は僕のものですからね?」

「‥‥ああ、分かっている」

冬夜は時々、私が逆らえない事を理由に調子に乗って来る。

だが私は、そんな彼をどうしようも無く好いてしまっている。

心から愛してしまっている。

これも

定めという奴なのか。

ならば

素直に受け入れようと思う。

「どうかなさいましたか?」

「いや、何も」

悪くは無いな。

むしろ楽しい。

冬夜

お前が

そうであるように──。

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