《MUMEI》

隣で半分口を開けて眠る男の顔に目をやる。どちらかといえば可愛い系の顔立ちだが、眉も鼻も唇も、ごりごりした喉仏だって、間違いなく男のそれだ。こいつは男だ。しかし、いくら眺めてみたところで、愛しいと思う気持ちに揺らぎは見えない。

どんなに悩んだって、俺は男でこいつも男だという事実は変わらない。

闇にぼんやりと浮かぶ白い寝顔を見つめながら俺は思考にふける。
俺がこいつに告白をしたら、どうなるのだろう。好きだと言ったらどんな顔をするのだろう。
想像もつかない。
ただ、気持ち悪いと冷たく拒否されるにせよ、付き合うにせよ、俺がこいつに気持ちを伝えることによって、今の俺たちの関係が壊れてしまうことは明らかだ。
それは俺が何より恐れていることだった。

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