《MUMEI》
小学校
「なあってば」

焦ったようにレッカは凜の顔を覗き込む。

「そんなの、わかるわけないじゃない」

冷たい一言に、羽田はさらに肩を落とす。
そんな羽田を見て言い方がきつかったと思ったのか、凜は若干口調を柔らかくした。

「先生、とにかくどこか安全な場所へ移動してから考えましょう」

凜はそう言うとレッカが「あ、ああ、そうだな。ひとまず避難所へ行こう」とテラを羽田の頭に乗せて歩き出した。
羽田は力無く頷き、その後に続いた。

レッカに連れられて行ったのは小学校だった。
羽田が知っている学校と同じ校名だが、いくつかある校舎はその半分が崩れ落ち、見る影もない。
とてもここが安全とは思えない。

「ねえ、本当にここが安全なの?」

羽田は思わず不安を口に出してしまった。
レッカは薄く笑って「まあな」と先へ進んでいく。

「ここ、俺の母校なんだけどさ、こんなんなっちまって……。もう廃校かなぁ」

壊れた校舎を眺めながら、レッカは少し寂しそうに言ったが、すぐに思い直したように首を振った。

「まあ、いいや。ほら、こっち」

「……いいんだ」

あっさりと気持ちを切り替えることができるレッカに羽田は少し尊敬の念を感じる。

「感傷に浸ってもしょうがないってね」

「……そうだね」

「そ。それよりほら、こっち」

レッカはずんずんと崩れた校舎の裏へと進んでいく。

「こっち?」

「そ。避難所は地下にあるんだ」

「……ふうん」

羽田と凜は同時に頷きながら壊れた校舎を見上げた。

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