《MUMEI》 双子ノ奇跡「おかえり、流理」 「ただいま、有理」 いつもの夕方。 「着替えてきてから食事用意するから!」 「まぁ待てよ。こっち来て座れ、流理」 おとなしくそれに従う。 「何だよ?」 「…流理さ、昨日仕事行ったきり帰ってこなかったけど、どこ泊まったんだ?」 ――忘れてた。 言い訳なんて考えてない。 有理の存在忘れてた〜。 すっかり浮かれてたからな、オレ。 「オレはホテルに泊まったんだ。有理と野中さん、もしかしてと思って帰れなかったんだよ」 「ホテルって…ラブホ?」 「なんでだよ!大体誰と泊まるんだっ」 「ひとりしかいないじゃん」 「とにかく、絶対……」 「流理、オレ達双子だぜ?何にもわかんないって思ってんの?流理だってわかったのに」 「な…何?」 「昨日、ヤったんだろ?夏坂環と」 「……有理も?」 有理はうなずいた。じっとオレの目を見つめてくる。 オレは観念した。なんか最近、折れてばっかりだなぁ、オレ。 「昨日は環さん家に泊まった。でも言っとくけど、オレから頼んだ訳じゃなくて、環さんの方から言ってきたんだからな」 有理は嬉しそうに笑った。「やっぱり」とか言って、笑い続ける。 「オレ達ってスゲェな。初めても一緒かよ」 「有理って今までしたことなかったの!?」 「お前な、兄貴の癖に週刊誌を鵜呑みにすんな!」 「ゴメン……」 こんな形で双子ってことに奇跡とか喜びを感じるのって、どうかと思うけど、こんなことでも有理が笑ってくれるなら別にいいかな、とも思う。 「今日はいっぱい話、聞かせてもらうからな」 「こっちこそ」 前へ |次へ |
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