《MUMEI》

し、しまったぁーーっ!!


例のチョコ、投げたまま忘れてた…


しかも箱が凹んでて、八つ当たりで投げつけたのバレバレだし…


「もしかしてバレンタインのチョコ?」


鈴木が聞いてくる。


あーっ、もう隠しても仕方ない!!


「そうよ、渡せないくせに鈴木のために買ったの!」


言っちゃった・・・


「渡せないのに買うなんて……ねぇ、私って間抜けだと思わない?」


私の問いに鈴木は、


「なんで?俺は嬉しいよ」


笑顔で答えた。


「もぉぉーっ、そういうのが嫌なの!!!!そんな中途半端な優しさが私を惨めな気持ちにさせてるのよっ」


鈴木は困惑している。


「お願い、私を苦しめないで…」


私の頬に涙が流れ始める。


「中途半端が一番辛い…」


きっと鈴木がもっと冷酷な男だったら、こんなに辛くなかったのかも…


優しくされるのがこんなに辛いなんて。


離れるのは辛い……でも。


「私…鈴木のこと忘れる…今、そう決めたから、だから鈴木も金輪際、私のこと忘れて…………お願い」


「そんな忘れるって…」


鈴木の言葉を遮って、もう一度お願いした。


「最後のお願いよ……私のこと少しでも好きなら、明日から私を見かけても話しかけないで・・・」


そこまで言って涙で言葉が詰まった。


そして、鈴木の目を見てもう一度言った。


「もうこれで最後にしよ………さよなら」

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