《MUMEI》

「久し振りですね、お嬢様がそんなに笑って下さったのは」

「?」

「良かったです」

「‥‥ああ」

何だか良く分からんが‥冬夜は嬉しいらしい。

跪くと、ニッコリと笑って、私の手を取る。

「瑠果お嬢様」

「な、何だ‥?」

一体お前は何がしたいのだ‥?

「今が幸せ≠ネら、今よりももっと幸せにしてみせますよ」

「?」

「お嬢様は僕のものですから。それに──‥」

「それに何だ?」

「大好きですよ、誰よりも」

「あ‥当たり前だッ。誰かを好きになどなられてたまるかっ。──!?‥こっ、こら何をするッ」

「お姫様抱っこは嫌ですか?」

「お、お前‥」

私は何をこんなにも動揺しているのだ‥?

どうしても抱かれるのは好かん‥。

逆は何とも無いのだがな‥。

「どうされました?」

「!?」

執事の顔が

直ぐ目の前だ。

「な‥」

何だこの雰囲気は‥!?

「と言う以前に降ろせ冬夜っ」

「?‥お嬢様、仰ってらっしゃる事がまちまちですが‥」

「う‥うるさいッ」

「お嬢様」

「?」

「楽しいですね」

「ぇ」

冬夜は

私の驚きに気付いているのかいないのか

ただ笑みを浮かべている。

彼の腕に収まったまま

私は暫く身動きが取れずにいた。

「‥‥‥‥‥‥」

これから

冬夜は私をどう幸せにしてくれるのだろうな‥。

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