《MUMEI》 「そんなこと無いぞ! 可愛いぞ!」 そう言って父は私からアルバムを取り上げて 結子さん・麗子さん・愛理さんに二枚目を見せた。 三人が、歓声を上げた。 「ねぇねぇ、これって地毛?」 美容師の麗子さんは、真っ先に私の髪型に興味を示した。 「…ウィッグです」 写真の私の髪は、昔のように腰までのストレートヘアだった。 「ウィッグ、今でも持ってるだろう?」 (父さん!余計な事を) ウィッグは、父と華江さんの再婚記念写真を撮る時に、今私が着ている洋服と一緒に華江さんが買ってくれたものだった。 高価な物だし、華江さんに買ってもらった物だから、私は一応荷物の中に入れてきていた。 (よりによって、麗子さんの前で言わなくても…) 麗子さんは、すごく嬉しそうな顔をしていた。 「他は、貸し衣装?」 結子さんの言葉に私は頷いた。 「アクセサリーも?」 愛理さんの言葉に、私はまた頷いた。 (こんなの、買わないし) 写真の中の私は、胸元にビーズ刺繍が施され、裾にレースがついたフワフワの水色のドレスを着ていた。 「「蝶子ちゃん、お姫様みたい!」」 双子が叫んだ。 前へ |次へ |
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