《MUMEI》

「俺は行かない」


その言葉に、『ある人物』がホッとするのが、私にはわかった。


(えぇ? まさか…)


瞳さんと春樹さんが恋人同士なのは知っていたが


この二人は、意外だった。

「まだ皆には言ってないから、内緒にしてあげてね」

瞳さんがそう言うので、私は頷いた。


どうやら、瞳さんだけは知っているようだ。


その後、どれだけ理由を追及されても克也さんは『行かない』を繰り返した。


結局


私は、家族と俊彦と花火大会に行く事に決まった。


(二人きりじゃないからいいかな)


私は、渋々受け入れた。


「じゃあ、そろそろお開きにしましょうか」


瞳さんがそう言ったのをきっかけに、皆が片付けをしていた。


「すぐ来るから待ってて」

「はい」


衛さんの車は皆からもらったプレゼントと双子でいっぱいになってしまったので、私は咲子さんと『赤岩』の駐車場で待つ事にした。

「じゃあ、私達は先に帰るわね」


華江さんは『まだいる』とダダをこねる父を引っ張って、助手席に押し込んだ。

後部座席のチャイルドシートには、既に友君が乗っていた。


父は明日、午後から半日仕事があるらしい。

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