《MUMEI》
番外編‐鳥籠の中に
この日、私はかねてから思っていたある事を切り出した。

「冬夜」

「あ、はい。どうされました?」

「以前‥お前は独り身だと言っていたな」

「はい」

「やはり恋しいか?」

「といいますと?」

「家族に会いたいと、そう思うか?」

「もちろんですよ。それに──忘れた事なんかありません」

「そうだな、すまん付かぬ事を聞いてしまって」

「構いませんよ。ところであの、ひとつ聞いても宜しいですか」

「ああ」

「それは‥?」

「ああ、あれはだな──」

鳥のいない、空っぽの鳥籠。

だがそれは私の大切な宝物のひとつだ。

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