《MUMEI》 二つの祭八月七日の花火大会の前に 商店街では二つの祭がある 一つは、御輿中心の祇園祭。 本場京都に比べれば小さな祭だが、子供の手作り御輿から、大人の本格的な御輿まで、たくさんの御輿が威勢よく商店街から駅前までを練り歩く。 もう一つは、踊り中心の祭。 地元の踊りは昔からある伝統的な物と、最近出来た今時な物があり、その二つを交互に踊り続ける。 参加するのは地元の学生や企業の連だ。 皆、お揃いの衣装を揃え、特に軽快な新しい踊りには、アレンジを加える連もあった。 祭の日は、『クローバー』も『シューズクラブ』も営業はしない。 『シューズクラブ』の四人は、御輿の時間と踊りの時間以外は、それぞれ個々に商店街を練り歩く。 それだけで 吸い寄せられるように、女性達は集まってくるのだ。 彼等の役目は『祭の客集め』だった。 (あの〜、嘘つき!) 私は集まってくる女の子達を見つめて呆然とした。 雅彦に群がる女の子達は、まだ、いい。 半分が、ショートパンツにスニーカーの女の子達だから。 しかし 孝太の所も、和馬の所も、俊彦の所も… 近寄ってくる女の子達は皆浴衣だったのだ。 前へ |次へ |
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