《MUMEI》 (まったく、もう) 私はと言えば… もちろん、浴衣は着なかった。 二日とも、Tシャツにジャージにスニーカーだった。 暑いので、タオルも首に巻いていた。 私の前を通る三人が、あからさまにがっかりしていた。 (浴衣なんて着れるわけないでしょ!) 私の前には熱した鉄板があり、イカとホタテがジュージューと音を立てていた。 ホタテ三つは串に刺して甘辛いタレを付け、照り焼きにしていた。 隣では、咲子さんが透明なカップに入ったカットフルーツを売っていた。 咲子さんは、七夕フェアと同じ浴衣だった。 ここは、『クローバー』の近くにある『スーパーまるやま』の前の臨時屋台。 『スーパーまるやま』は、新鮮な魚介類と、青果をアピールする為に、毎年頑張っていた。 そんな『スーパーまるやま』の手伝いを、毎年咲子さんはやっていたのだった。 そして、今年は私もそれに借り出された。 時々、店長で元魚屋の丸山海(まるやま うみ)さんと、奥さんで、元八百屋の倫子(りんこ)さんが交代してくれる間だけ、私は祭を見物する事が出来た。 さらしにはっぴ姿で、俊彦がものすごく張り切っていた御輿と踊りは、一応見た 前へ |次へ |
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