《MUMEI》 さすがにお客様が沢山いる場で、私にいつものように話しかけては来なかったが… 逆に、いつもの数倍の目力を感じ、無視したら呪われそうだったから。 御輿は、『シューズクラブ』の他の三人に、いつもの商店街の男性陣と、瞳さんを含む数名の女性達が担いでいたのだが 俊彦よりも 小柄な薫子さんが頑張って担いでいたのがすごく印象的だった。 (かっこいいな) 薫子さんはいつもの着物ではなく、男性と同じようにさらしを巻いて、はっぴを着て、足袋を履いていた。 私が思わず見とれていると 約二名が勘違いして手を振ってきた。 俊彦と 珍しくアクセサリーを付けていない和馬だった。 (いや、違うから) いちいち訂正するのも面倒で、私は二人を無視した。 それから、踊りは… 意外な事に、孝太が一番うまかった。 考えてみたら、孝太はリズム感がある。 特に伝統的な踊りの方は、繊細な指先の動きは女性よりも艶やかだった。 逆に、可哀想だったのは雅彦と和馬だ。 二人とも、新しい踊りの早いテンポにまったくついていけず、雅彦は、下駄にも苦戦して、いつ転ぶかヒヤヒヤして見ていた。 (あ、しまった) 前へ |次へ |
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