《MUMEI》

(あ〜あ、残念)


私の足取りは、急に重くなった。


疲れがどっと出たのかもしれない。


私がトボトボと歩いて行くと、前方から大勢の浴衣の集団が歩いてきた。


彼女達は


皆私が誕生日にもらったのと同じ、蝶が描かれた浴衣を着ていた。


(この人達、確か…)


それは、美しく舞う孝太と、隣にいた俊彦を先頭にした『シューズクラブ』のお得意様のみが参加できた連の女性達だった。


ちなみに、ぎこちなく踊る和馬と雅彦は一番後ろだったので、彼女達は二人の踊りを見ていなかった。


「あら?あなた、確か…」

その中の一人が、私に声をかけてきた。


「こ、こんばんは」


私の顔はひきつっていた。

その女性は


孝太のお得意様の、創作料理店の女将だった。


「こんばんは。大変ですね、汗だくで」


「は、はぁ…」


女将は余裕の笑みを浮かべた。


本当に踊りに参加したのかわからないほど、女将は涼しい顔をしていて、浴衣に乱れも無かった。


私は女将が言うように、汗だくだった。


「では、失礼します」


「あ、おやすみなさい」


私達は言葉少なに別れた。

他の人達は私を見て笑っているようだった

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