《MUMEI》

「た、ただいま!」



「あ、みつるどこ行ってたの!!
……あら??蓬田さん??」



店の前で、おふくろが待ち構えていた。



「ちーっす」



おれが言うと、蓬田が視線を尖らせた。


…しまった。

―…女らしい挨拶ってどんなんだよ!?



「…ご、ごきげんよう…??」



言い直すと、



「あら、お嬢様ねぇ!ごきげんよう♪」



と、おふくろには冗談で返され、蓬田には笑われた。


―…だって、分かんねんだもん!!


「…ところでみつる、あんた空手は??」



おふくろが、いきなり切り出した。



「…え…っと―…」



言葉に詰まり、おれを見てくる蓬田。


うぇ!?


おれに何て答えろと、



「…あんた、休むのは勝手だけど、
清水さんに心配かけんじゃないよ」



おれたちが慌ててる内に、

おふくろはそう言うと、蓬田に配達先のメモを渡して
店に入っていってしまった。




…おれは、今この瞬間にだって空手してえんだよ。


あ―もう!!!!



……どーすればいんだよ…

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