《MUMEI》 番外編‐小箱の調べ「冬夜、どうしたのだ?」 「あ‥すみません。見つけてしまったもので」 「おお、懐かしいな」 「ご存じなんですか?」 「ああ。母上のオルゴールだ。こんな所にあったのだな」 宝石箱を象った小さなオルゴール。 幼い頃、私はよくこの小箱から流れる音を聴いていた。 どんなに泣いていても、この音を聞かせれば必ず泣きやんだと母上が言っていた。 「少し鳴らしてみてもいいですか?」 「ああ。構わんが。音が出るかどうか──」 「あ、鳴りますね、ちゃんと」 「本当だ。──なかなか良い音色だな」 「そうですね──」 前へ |次へ |
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