《MUMEI》
鈍感 〈私〉
そっか、あの子も一目惚れって言ってたしな…
椎名くんも知らなくて当然かな?


―でも、ちゃんと伝えてあげなきゃ!!


と、そう思って、吉田ゆりちゃんの告白を椎名くんに伝えると…



返ってきた言葉は、こうだった。



「へ??…付き合うって―…どこに??」



…し、椎名くん…!!
一体、何人の女の子を泣かせてきたんだろ…

もう『鈍感』の域、通り越してるよ…!!!



私が固まっていると、



「…なあ、どこに付き合って欲しいんだ?そいつは」


「…椎名くん、聞くべきとこは、
あえて言うならWhereじゃなくてWhoだよ…」


「はあ??なにそれ。…分かるように言えって」



もー、鈍感過ぎ!!



「…だから、その子は椎名くんが好きで、
だから付き合って欲しいって言ったの!!」



何か私が恥ずかしくなってきた。答え待つの、緊張する…


椎名くんを見ると、困ったように視線を游がせている。



「…えーと…、あー……」



きっと、今までにもこんなことあったんだろうな…



「…うん、その子には…」



ドクンッ



言葉を探していた声が、確りとしたものに切り替わる。

游いでいた目線が、私の目線と交り合う。


―…まるで、私が吉田ゆりちゃんであるかのように、緊張で心臓が跳ね上がる。



「―…その子には……、
おれは誰とも付き合う気は無い、って…伝えてください」

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