《MUMEI》

(別に、普通じゃない)


私はチョコバナナをまた一口食べた。


(あ…)


下の方のチョコが落ちそうになった。


(よっと)


軽く、下の方を舐めてチョコを先に口に含んだ。


「…おい、人の話聞いてたか?」


「は?」


私は三口目を口に含んだ。

(何?)


ふと見ると、俊彦がしゃがみ込んでいた。


和馬は私に背を向けていた。


雅彦の顔は赤いし


孝太は呆れていた。


「別に、普通だと思うけど?」


私は最後の一口を、口いっぱいに頬張った。


「…昔はあんまり思わなかったけど、チョコバナナって、すごいんだね」


雅彦までおかしな事を言い出した。


「お前、もう男の前では食うな」


「なんで?」


「…危険」


「はい?」


(チョコバナナが?)


「こんなにおいしいのに」

「大丈夫か、俊彦君!」


海さんがうずくまる俊彦に近付いた。


海さんが何か話しかけると、俊彦はゆっくりと立ち上がり、前屈みで慌てて『スーパーまるやま』の中に入っていった。


「男の子は大変ね」


「ね〜!」


咲子さんと倫子さんは俊彦の身に何が起こったかわかったようだ。


「お前は平気か?」

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