《MUMEI》

「ここ…」


「知ってるの?」



「うん、子供の頃よく家族で来てた」




――ここは銀座の高級料亭…。



つか家族で?――よく来てた??




ここは最近事務所の先輩に連れて来て貰った。




も〜そりゃ感動だった。

料理も凄いし店の中も高級感いっぱいで…。



つか自腹じゃ今日が初めてだったりする訳で、金額もそうだけどちょっと場違いな気もして足元がフワフワする。

「ここ事前予約と当日予約じゃ仕込みが全然変わるんだよね、でもどっちにしても美味しいけど」



「そ、そうなんだ!
じゃ、入るか」


店に入ると直ぐに奥の個室に促された。



「遅かったじゃん!」

「おう…」



先に羽鳥が来ていた。
つか既にビールとつまみがテーブルに置かれている。




「ちょっと…、内藤」




背中ごしに折原が小さな声で言った。



「いーから来い!」


俺が先に座敷に上がると折原は渋々といった感じで後ろからついてきた。



「こ、今晩は…」



「折原真菜ちゃん、大学一緒の…」




羽鳥の奴、折原をびっくりした表情で露骨にガン見している。




お陰で折原は居心地が悪そうにうつ向いてしまった。


「…コイツが羽鳥圭、一緒のグループなんだ」



するといきなり羽鳥はハッとした表情になり



「おい、いーちゃん!聞いてたタイプと違うじゃね〜かよ、おい!真菜ちゃんめっちゃめちゃ可愛い〜!初めまして真菜ちゃん!俺のことはけいちゃんって呼んでね〜っ!」



「おい!真菜ちゃんって言うな!俺だってまだ名前じゃ呼んでねーんだぞ!」

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