《MUMEI》

瞳さんは、薫子さん達と『花月堂』に残った。


「いや〜、華やかだね」


「浮気は駄目だからね、貴志(たかし)」


「わかってるよ」


運転席の愛理さんの隣


助手席には、白い浴衣の男性が座っていた。


「はじめまして、蝶子ちゃん」


「はじめまして、相田(あいだ)さん。今日は、よろしくお願いします」


後部座席から、私は相田さんに声をかけた。


相田さんは、駅から近い高校の教師で、愛理さんの恋人だった。


二人は祇園祭の後から付き合い始めたので、このことはまだ女性陣しか知らなかった。


三十分後。


私と結子さんと麗子さん・それに、相田さんは愛理さんの車から降りた。


場所は、俊彦が待っている地元の駅の、『隣の駅』だった。


賭けの内容は


『五時五十分着の電車から降りてくる私を、俊彦が、私が駅から出る前に見つける事』


だった。


(しかし…これで見つけたら、ある意味すごいよな)

私は自分の姿と


結子さんの姿と


麗子さんと相田さんの役割と


同じ電車に乗っている浴衣の集団の事を考えながら、そう思っていた。


そして、私は、私達は賭けに見事に勝ったのだった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫