《MUMEI》
秘密の場所
(ちょっと可哀想だったかな?)


皆と離れ、賭けに勝った私は、一人で歩いていた。


花火大会の会場近くではなく、昔、よく行った花火が見える『秘密の場所』に向かって。


チラッと交差点のコンビニのガラスにうつる自分の姿を見て、思う。


『まるで別人』だと。


今日の私は


誕生日にもらった紺地にオレンジの蝶が描かれた浴衣

…ではなくて


華江さんから連絡を受けた蘭子さんが急遽用意した、白地に朱色の蝶が描かれた浴衣を着ていた。


髪はウィッグを付けたから、ロングだった。

アップにすると外れる危険があるからと、毛先をカールして、サイドで束ねてあった。


束ねた髪は、私の左胸の前まできていた。


更に、束ねた部分には、蝶のクリップが止めてあった。


メイクも今日はバッチリだったし。


愛理さんがくれたネイルがあったから、ペティキュアも塗られていた。


(それにしても、結子さん、似てたよな)


結子さんは私より少しだけ背が低い。


それを、ほんの少しだけ他より高い下駄を履く事で、私に近い背格好になっていた。


今日の結子さんは、私が誕生日にもらった浴衣やその他の小物を全て身に付けていた。

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