《MUMEI》 なづきのプリントはどれもこれも破けていたり皺くちゃだった。 だが、楽しかった。 「…………ふ」 ついつい笑いが漏れる。 プリントのありとあらゆる隙間に見覚えがある教師の顔が映っていた。 整頓もはかどらない。 答案や小難しい問題の横に生き生きとした顔があった。 「出来た。」 なづきはたっぷり時間を使って解いてやる。 滑らかに赤ペンが流れた。 「うん、いいじゃん。全問正解。」 成果は地道だが確かに表れている。 「……そう」 悪い方にしか考えられないなづきに褒め言葉は禁物だ。 「もしテストが頑張った分報われたら何か買うよ。」 「え、要らない。」 くれるなら現金の方が嬉しいなづきだった。 「貰えるとき貰わないと貰えなくなるさ。」 和成は頭を振り大袈裟なリアクションをする。 「……マゼンタ」 「 ん? 」 「マゼンタの絵の具がいい」 ルナに奪われたあの色でなづきは赤を作りたかった。 そうすれば、自分の手にマゼンタが戻りわざわざルナに借りずに済んだ。 前へ |次へ |
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