《MUMEI》 再会。ドア越しに聞く。 『…いいの?』 しばらくしてから、 『どうぞ。』 と、ヨウスケは、また優しい声で言ってくれた。 ゆっくりとドアを開けると夕陽が眩しかった…。 シルエットで分かったのは、ベッドを起こして座っているヨウスケ…。 恐る恐る、病室に一歩入った私は驚いた。 『……目!?』 私は思わず声が出た。 …ヨウスケの顔は目の周りにグルグルと包帯が巻かれていた……。 『どうして!?』 私は、またモトクロスでケガでもしたんだろうって…思ってた。 リョウくんも“命に別状はない”って言ってたのに…。 『…瑠伊。座って。』 驚いている私とは対照的にヨウスケは落ち着いていた。 私は言われた通り、椅子に座った。 ヨウスケは手探りで私の手を握り、“ちょっと太った?”と笑ってみせた。 声が出ない私にヨウスケは優しく話し掛けた。 『…ゴメンな瑠伊。俺のせいでお前をかなり傷つけた…。本当に悪かったな…。』 『…ううん。』 そう言うのが精一杯だった。 『…俺、なんか厄介な目の病気なんだって。かなり悪くなるまでほっといたから、手術しても完治しないんだってさ…。』 『……そんなっ。』 『大丈夫、心配すんな。日常生活には影響ないって。普通に生活は出来るんだ。ただ……。』 『…バイクは!?』 すぐに頭に浮かんだ。 『…バイクは無理だってさ。しょうがねぇよな。』 『そんなっ。しょうがないなんて…。どうしてそんなにヒドくなるまで…。』 私は許せなかった…。 あんなに大好きだったバイクを“しょうがない”の一言で、簡単に諦めてしまうヨウスケが。 沈黙の後、後ろから声がした。 『私のせいなんです。』 前へ |次へ |
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