《MUMEI》

今、私が抱えているのは、リボンをかけたハート形の赤い箱。

「よしっ」

さあ行くぞ。

これを冬夜に渡すのだ。

だが‥。

こんな肝心な時に‥彼はどこへ行ったのだろう?

「‥‥冬夜、居るか?」

‥‥?

「おお、そんな所に居たのか」

「お嬢様‥?」

「丁度良かった。お前に渡したい物があるのだ」

「何ですか?‥ぁ」

「受け取れ」

「チョコレート‥ですか?」

「あ、ああ。そうだが」

「それで籠ってらしたんですね」

「‥‥!?」

ばれていたのか‥?

まさかな‥。

「お嬢様」

「ん‥?」

「ありがとうございます」

「っ‥、れ‥礼などいらん」

「お嬢様‥?」

「‥‥‥‥‥‥」

私は只──‥

只お前が

喜んでさえくれれば──。

私は

それだけで十分だ。

冬夜

私の気持ちは

ちゃんとお前に伝わったか?



***

番外編‐特別な日に‐終

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