《MUMEI》 過去の真実「ねぇ、人魚姫は王子様いないの?」 この場合の王子様は片想いの相手か恋人なのかわからないが どちらもいない私は、俊彦の言葉に頷いた。 「そっか…」 俊彦が呟いた時。 (あ…) 花火大会が始まった。 空に輝く大輪の花達。 この場所は会場から少し離れているから、光の後から音が聞こえた。 音は、実際はそれほど大きく無かったが、二人きりだったから大きく思えた。 「こっち見ないでいいからさ」 ? 「よかったら、俺の昔話聞いてくれない?人魚姫」 私が返事に迷っていると、俊彦は勝手に話を始めた。 私達はお互い微妙に離れて座り、花火を見つめていたが… 私は、俊彦の話に集中していて花火は『一応見ている』だけだった。 花火の音すら、邪魔だと思えていた。 俊彦は、ゆっくりと話を続ける。 私の知らなかった、過去の真実をー。 「本当に好きなんだ。今も昔も。 蝶子って女の子が」 (好きなのは、私の足だけでしょ) 私は否定的な気持ちで俊彦の話を聞いていた。 「スッゴい可愛かったんだ、最初から」 (はいはい、足がね) 「…子供の頃の年の差って大きいよね」 前へ |次へ |
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