《MUMEI》 私は、俊彦の方を見て、頷いた。 「良かった〜。あ、もちろん花火見ながらでいいからね」 俊彦が花火を指差しながら、笑ったので、私は消えていく花火を見ながら頷いた。 丁度、花火大会は半分を過ぎた所だった。 大輪の花火ではなく、小さな花火が無数に夜空に輝いた。 追いかけるように、下から光の筋が伸びていく。 これから、花火大会は佳境に入った。 そして、俊彦の話もー 『あの事件』へと近付いていった。 「俺の見る目が無かったんだ。蝶子に『あいつだけは大丈夫』だなんて言ったばかりに…」 (そうだ) 私が変態ストーカーに付いて行ったのは、『俊彦がいるから』という言葉だけではなく、毎年、俊彦の高校の文化祭に行く度に、沢山いる同級生の中で『こいつは安全』と『俊兄』が言っていたからだった。 「放課後、帰り際にあいつが『遅くなったけど、誕生日プレゼント机に入れといたから』って言ったんだ」 (誕生日プレゼント?) 突然話が飛んだ…と思った。 「卒業式の準備が忙しくて帰るのが遅くなったんだ、その日は」 『その日』とは、私が襲われた日の事だった。 「俺の机の中にあったのは…」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |