《MUMEI》

「英田?英田くーん?」
「え、あ、あぁ」

ひとり思考に耽っていた俺、店長に肩を叩かれ吃る。銀二は甘い匂いをぷんぷんさせて、扉から出ていくところだった。

あぁぁぁあ、
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
絶対に、嫌だ!

現実を見たくなくて、こちらに挨拶めいたものをする銀二から思わず視線をずらしてしまう。視界の端に不思議そうな顔がちらつくが、すぐに出ていった。

「英田クン?」
「へぁ!?」
「何その反応‥‥大丈夫か?顔ものすご険しいけど」
「や、あ、え、」

店長に心配そうというか可哀相な顔をされて焦るが、なんと言っていいかわからない。思考の裏側で溢れる嫌な想像、彼女、だなんて。

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