《MUMEI》

(まさか…)


「あいつが盗撮した蝶子の足の写真だったんだ。

足だけだったけど、俺にはすぐにそれが蝶子だってわかった。

写真はセーラー服からスクール水着まで、あいつが蝶子と初めて会ってからの三年分あってさ。

すぐに捨てようと思ったけど…」


(…けど?)


問い詰めたい気持ちを抑えながら、私は花火の方を見つめ、精一杯平静を装った。


私は今は蝶子ではなく


『人魚姫』なのだから。


「迂濶に捨てて、蝶子の綺麗な足の写真を誰かが見るかもしれないから、俺が持ってた方がいいと思ったんだ。

だから、そのままあいつのアパートに行った。

そしたら、あいつのアパートの壁に、天井に、同じ写真が貼ってあって、俺は、それは、全部破り捨てたし、ネガも捨てた。

本当は証拠物件は回収しなきゃいけないらしいけど、『今回は未遂だから』って、警察のおじさんが目を瞑ってくれたんだ。

それから警察に乗り込んで、捕まったあいつをぶん殴って蝶子を連れて帰った」

そして、私は、俊彦が持っていた写真を見てしまった。


「この話を聞いたら、蝶子は俺を許すと思う?」


全てを話し終えた俊彦が、ポツリと言った。


「ねぇ、人魚姫」

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