《MUMEI》 (そんな事言われても…) 今更、真実がわかっても、私はどうしていいかわからなかった。 頷く事も、首を横に振る事も、俊彦を見る事も出来ない私は、ただ夜空を見上げていた。 数秒間の星空と沈黙の後、最後の花火が上がる。 一番大きく色鮮やかな大輪の花が夜空に咲く。 その美しい光の花を私は見ることが出来なかった。 俊彦が私を引っ張り、強引に抱き寄せたから。 (何これ?) 突然の出来事だった。 ドォンッ 光の後に音が響いた。 俊彦はまだ私を離さない。 「ちょっと」 思わず私は喋ってしまった。 しかし、俊彦は何の反応も示さないまま、私を抱き締めていた。 (音で聞こえなかったのかな?) 私は俊彦を見上げた。 すると、俊彦が、信じられない事を口にした。 「ねぇ、蝶子。どうしたら、俺を許してくれる? もう一度好きになってくれる? どうやったら、俺の本気の好きが蝶子に伝わる? 足だけじゃ無くて、蝶子の全部が愛しくて、欲しいんだってわかってくれる?」 そして、俊彦は私を抱き締める腕に、力を込めた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |