《MUMEI》
佐久間の新居
電車を降りてマンションに近づくにつれて胸がざわついた。


太一に会いませんように!


そう強く思い佐久間の部屋のチャイムを鳴らす。


「どうぞ〜」


佐久間の声と同時にオートロックのドアが開いた。




佐久間の部屋に入ると、段ボールがまだまだ山積みにされていた。


なのに・・・すでに宴会が始まっている。


「おつかれ〜。愛加はここに座って!」


千夏に言われて佐久間の横に座る。


「愛加・・・なんで封筒を脇に挟んでんの?」


佐久間に聞かれて思い出す。


「やばっ!!!帰りに投函してって言われてたんだった・・・」


「じゃぁ、ここに置いとけば?」


千夏が棚の上に置いてくれた。


「これなら帰るときに気づくでしょ?」


「ありがとう。・・・・あれ?今日は越智さんいるんだ・・・」


コンパで会って以来の越智さんがいて驚いた。


「佐久間の引っ越しは手伝わないとな」


越智さんは笑いながら言うが、


「そう言いながら、お前が来たのは2時間前だろ!?」


と、すかさず高橋さんに突っ込まれている。


そんな会話で、みんなが笑っている中、千夏が何か言いたげな顔をして私を見ている。

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