《MUMEI》 『なに?』 気づかれないように口ぱくで千夏に聞いた。 『さっき・・・・ゴニョゴニョ』 ん?さっき? 『さっき』までは分かったが、続きが分からない。 『なに??』 分からなくて、もう一度、口ぱくで同じことを聞いた。 「何してんの?口をモゴモゴ動かして・・・」 私の目の前に座っている高橋さんが不思議そうに聞いてきた。 「あ・・・・・・」 高橋さんはじっと私を見ている。 「なんか・・・歯に挟まったような気がして・・・」 歯になんか挟まるなんて、すっごいカッコ悪いんだけど・・・ 千夏、なんか言ってよ! と、千夏をチラッと見たら、いかにも自分は関係ないような顔をしている。 「爪楊枝出そうか?」 佐久間が真に受けてダンボールをゴソゴソと探り出す。 「いらないわよっ!」 思わず佐久間に八つ当たり気味に強く言った。 あぁ、もうっ。 千夏のせいで恥かいた。 私が居心地の悪さを感じていると、 「あ!」 突然、佐久間が声を上げた。 前へ |次へ |
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