《MUMEI》
引越しの挨拶
「引越しの挨拶、もう一回行ってくる」


佐久間は思い出したかの様に言った。


「夕方に行ったんだけど、居なかった人もいてさ・・・」


そして段ボールの上に置いてある紙袋から小さな袋を取り出して、私たちに見せた。


「ほら、あと2軒分残ってるしサッと行ってくるわ」


「別に後でもいいじゃないか、そんなの」


越智さんの言葉に佐久間は言い返す。


「今日は飲み会でうるさくなるだろ?だから迷惑かける前に挨拶に行きたいんだよ」


そう言って佐久間は引越しの挨拶に出かけて行った。


「2軒て両隣だよな?」


越智さんが高橋さんに確認すると・・・


「いや・・・あいつは両隣と上下に行くらしい・・・」


と教えてくれた。


「見た目によらず、きちんとしてるわね・・・」


私が言うと、高橋さんが何かに気づいた。


「あれ?そういえば、あいつ、5軒分買ったって言ってなかったか?」


高橋さんが千夏に確認する。


「言ってた・・・」


千夏はそう答えて、私に何か伝えたそうな顔をしている。


千夏がさっき訴えてたのって、引越しの挨拶のこと?


あいさつ・・・?


両隣と上下・・・
てことは4軒・・・


あっ・・・まさか・・・

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