《MUMEI》

私がじゃがいもの皮と奮闘していると、

隣でするするとじゃがいもの皮を剥き始める椎名くん。



「あ!!いいよ、これくらいは―…」



私が言うと、



「…そうして欲しいのは山々なんだけど、後はいもだけなの。
―…マジで苦手なんだな、料理」


笑って言う椎名くん。
私は恥ずかしくなって、俯く。



「小さいとき…台所の包丁で怪我してから、近寄らせてもらえなくて…
やろうとしても、私不器用で…。
―…椎名くんは??いつからこんなに料理上手くなったの?」



問い返す。



「―…おれは―…親父が死んでからずっとやってるから……小3から、かなあ」


「―……!!」



そう、だったんだ…


するすると皮を剥いていく椎名くんの手先にみとれていると、



「いたッ!!」


…指を、切ってしまった。

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